IT雑学

ZIP”圧縮”という言葉に惑わされない

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ZIP形式といえば、メール添付用にパスワードを付けたり、たくさんのファイルを受け渡しする際にまとめたり、と日常のPC業務で使用することも多いと思います。

ただ、ZIP”圧縮”という割には、期待したほどにはファイル容量が小さくならずにガッカリすることも結構あります。

改めてZIP形式の特徴・使い方を整理してみたいと思います。

ZIP形式とは

ZIPファイルフォーマットの機能としては大きく2つの面があり、

    • データ容量を縮小する圧縮フォーマット
    • 複数ファイルを一纏めにするアーカイブフォーマット

として、利用されています。

ZIP形式にする際に解凍パスワードの設定も出来るので、メールにファイル添付する際などにもよく利用されてますね。

また最近の一般ユーザー向けOS(WindowsやiOS)では標準対応している圧縮フォーマットであり、コマンドを使ったり専用アプリケーションをダウンロードしたりする必要もないため、日常的に使用する場面も多いと思います。

まずは上記2つの機能について、それぞれ簡単に解説します。

圧縮フォーマットとして

まず、圧縮フォーマットとしての性能はどうでしょうか?

ZIPの圧縮率は?

ZIP形式はデータ容量を縮小する圧縮機能を持っていますが、実は他の圧縮フォーマットに比べて圧縮率はそれほど高くないため、思ったほどは容量が小さくならないこともあります。

圧縮対象のファイルにもよりますが、RAR/7ZIP/CABなど他のフォーマットが圧縮率30%程度とすると、ZIPは50%前後、とったところです。

また通常の保存の段階で既にある程度無駄を省いた状態にあるファイル形式も多いため、いくつかのファイル形式では、ZIP圧縮しても容量自体はほとんど変わらなかったりします。

例えば、画像ファイルのJPEGは、それ自体が圧縮した状態のファイルフォーマットであるため、別形式で圧縮しても容量はほとんど変わりません。

圧縮されたデータを、さらに別の形式で圧縮しようとすると、場合によってはむしろ容量が増えてしまうこともあるようです。

上記を踏まえると、純粋にファイル容量を小さくしたい場合は、別の圧縮フォーマットを選択する、というのも検討してみてもいいかもしれません。

容量制限がある

ZIP形式のファイルを作成しようとしたとき、圧縮・解凍に失敗することがあります。

別記事でも紹介していますが、実はZIP形式にできるファイルには容量の制限があり、圧縮前で4GB以下、圧縮後で2GB以下になるデータしかZIP変換できません。

ZIP圧縮の容量制限についてはこちら
ZIP圧縮には容量制限がある!?
ZIP圧縮には容量制限がある!?

上記制限容量を超えている場合、解凍するとエラーとなり中身を見ることもできません。

上記エラーの際、一見すると圧縮ファイルができたように見えてしまうので注意が必要です。誰かに共有する際などには事前に一度解凍してみて、キチンと目的のファイルが開けるかか確認しましょう。

アーカイブフォーマットとして

複数のファイルをひとまとめにすることを、アーカイブといいます。

アーカイブの役割

例えば100枚ある写真のデータを転送しようとしたときに、1ファイルずつ100回、転送処理を行うよりも1まとめにしたアーカイブファイルを1回転送するほうが効率的です。

ZIP形式のファイルを作成することを”ZIP圧縮”と言うことも多いので、圧縮フォーマットのイメージが強いかもしれませんが、個人的には、ZIP形式の使い道としてはアーカイブフォーマットのほうが主になるかなとも思っています。

例えばLinuxでは、アーカイブ化(tar)と圧縮(gzip)はそれぞれ別の形式で行ったりします。

複数のファイルを受渡する際や、またバックアップを取ってどこかに保管しておく際などは、ひとまとめのファイルになっていたほうが何かと便利ですね。

ただし、結局のところ容量制限があるため、ファイルサイズによってはZIP形式で正常に保存できない場合があるので注意が必要です。

解凍パスワードの設定

ZIP形式のファイルを作成・解凍する際に、パスワードを使用することができます。

データを共有する際に、セキュリティ向上のためにメール添付する際にパスワードを設定して、別メールで再度パスワードを送る、なんてこともよく見かけます。

ただし近年では、この手法自体は俗に”PPAP”とも呼ばれて、推奨されないセキュリティ対策とされています。

“PPAP”の問題点については下記にて解説していますので、利用している方はご一読ください。

PPAPによるデータ共有の危険性についてはこちら
“PPAP”の危険性とは?
“PPAP”の危険性とは?

ZIP形式の注意点

ZIP形式については上記以外にも注意点があります。

OSが違うと文字化けする

Macの標準機能で圧縮した場合、Windowsで解凍すると文字化けしてしまうことがあります。

文字コードの違いによるものなので日本語を使わなければ大丈夫だったりもしますが、そうもいかない場面もあるかもしれません。

そういう時は、OSの標準機能ではなく、フリーの圧縮・解凍アプリケーションを利用するのも回避策の一つになります。

解凍できていないことがある

Windowsでは標準で使用できる形式のためか、ZIP形式を解凍しなくても中身のファイルを見ることが出来てしまいます。

そのため、PC操作に慣れてない人はキチンと解凍しないままファイルを開こうとしてしまうこともあります。

ファイル操作する際には、解凍した状態で行わないと正しく動作しない可能性があるため、取り扱い時には注意が必要です。

代替手段は?

手軽にファイルをまとめて共有できる手段として普及しているZIP形式ですが、これまで記載したような課題・問題もあり、万能というわけではありません。

近年ではクラウドストレージも数多くあり、クラウド上での大容量ファイル共有・ダウンロードリンク送付によるデータ共有も容易となりました。

特に前述の容量制限や、PPAPの問題をクリアするという点でも有効だと思います。

一方で、ファイルサイズを削減する”圧縮”という点でいえば、より圧縮率の優秀なフォーマットでの圧縮をお勧めします。主なところとしては

  • 7zip:圧縮率が高い、オープンソース、共有には不向きかも
  • lzh:日本製、圧縮・解凍処理速度が速い、圧縮率も良、iOSは別途アプリが必要
  • rar:主にヨーロッパで普及、圧縮率は高いが圧縮処理に時間がかかる
  • gzip:Linuxで標準、アーカイブ化のtarと組み合わせることが多い

といった選択肢があります。

自分単独で利用する分には好みで選んでも構いませんが、例えばデータを共有することが目的の一つになる場合は、相手方がどの程度のITリテラシーであるか、OSなどの環境は何か、といった点も踏まえて方法を選択する必要があると言えるでしょう。

それぞれに一長一短はあると思いますので、対象・目的・容量・環境に合った方法を選択して、賢くファイル管理しましょう

ABOUT ME
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理系大学卒業後、音楽の専門学校へ。ギター・ドラムでの音楽活動を経て、30歳手前でプログラマーへ転身。
ウェブシステム・スマホアプリ・マクロツールなど様々な受託開発を経験した後、メーカー企業で業務アプリケーションの開発に携わる。45歳を過ぎて独立、グローナレッジ設立。
応用情報処理技術者、ウェブデザイン技能検定3級、色彩検定2級、日商簿記2級。登山は富士山経験あり、マラソンはハーフ1h58m。
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